これからも続く新型コロナウィルスと共存する社会。
できるだけ人と会わないように、できるだけ密にならないように・・・とは思っていても、飲み会を自粛するのも限界だし、旅行もしたい。
少人数で密にならないようにと近所の居酒屋でそっと飲み会をし、折角の Go To トラベル だから隣の県くらいならいいだろうとなるべく人に会わないように愛車に乗って小さな旅をする。
しかし、仕事はなるべくテレワーク。
できる限り電話やメールでやりとりをし、必要な書類はレターパックで送ります。
今は登記申請もオンラインでできるし、考えてみれば法務省も今のコロナ過を見越して登記をオンライン化したのかもしれない・・・などと、馬鹿げた妄想も出てきます。
そんな中、テレワークが推奨される今の時代にぴったりではないかと、前から一度はチャレンジしたいと思っていたテレビ電話による定款認証の手続きをやってみました。
今日は、そのときの模様をレポートしようと思います。
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テレビ電話による定款認証について公証人役場が発行している説明書を読むと、何だかこまごまと書いてあります。
直接公証人役場に出向く今までのやり方とどう違うのか異なる点だけを書いてもらえばいいのに・・・、とブツブツ文句を言いながら、まずは熊本の公証人役場ではチャンと対応をしてくれるのか、知り合いの書記に電話をしてみました。
「今度テレビ電話で定款認証をするとバッテン、みんなしよんなはるね?」
「けっこうやってますよ。でも、県外からだけ。熊本の先生達はまだみたい」
そりゃそうでしょ。
特にワタシは公証人役場から遠くないところに住んでいますので、オンライン申請をして翌朝公証人役場に顔を出せば終わります。こまごまとした説明書を読んでまで面倒なことはしたくはありません。
「今度ホームページに載せようと思うけん、してみようと思うとたい」
別に電話の向こうの彼女に断る必要は無いのですが、事務所のスタッフからも、いつもと違うやり方をするというので眉をひそめられ、少し気弱になっていたのでしょう。
説明書をよく読んでみると、今までのやり方と大きく違うのは、定款認証の前に委任状などの紙の書類の原本を公証人役場に郵送しなければならないこと、事前に手数料を銀行口座に振り込まなければならないことです。
今までですと、オンライン申請後に公証人役場に出向いて委任状などの原本を渡し、定款認証後に手数料を払えば済むことです。
余計な手間が掛かるテレビ電話での認証を、よほどの事情が無い限り、熊本の人たちはしないでしょう。
そのほかにも、公証人役場にメールを送ってこちらのメルアドを知らせておかなければなりませんし、ノートパソコンかスマホの準備もしておかなければなりません。
もっとも、これらはこれまでにオンライン申請をしている方なら簡単なことです。
とりわけ簡単なのはノートパソコンを使う場合です。
ノートパソコンに、Google Chrome か FireFox がインストールされていれば、ほかに何もインストールする必要はありません。
以前、ワタシが初めてオンラインでの会議に参加したときに、今ではメジャーになっていますが当時はワタシにとって未知の Zoom というソフトをインストールしなければなりませんでした。自分のPCにはなるべく変なソフトはインストールしたくないので、会議を欠席しようかと思ったくらいです。
しかし、定款認証で使う面談用の FaceHub というソフトは、Zoom のようにインストールする必要は無く、ノートパソコンに前記のブラウザーがインストールされていれば勝手にブラウザーの中で動くようになっています。
ですから、ノートパソコンでの準備は簡単です。
なお、もしスマホで面談をするなら、事前にスマホに FaceHub というアプリをインストールしておく必要があります。
今までアプリをインストールしたことがある方なら、Google Play や App Store で「FaceHub」を探して、簡単にインストールすることができます。
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ノートパソコンやスマホの準備と並行して、定款などの書類の準備をします。
まず、これまでと同じように定款案や委任状、申告書を作成します。
そして、これらの書類や印鑑証明書などの写しを、認証をお願いする公証人に事前にファックスします。
これは、これまでのやり方と同じです。
ただし、ここで注意をしなければならないのは、委任状には事務所の住所ではなく自宅の住所を記載する必要があるということです。
今回は、いつものように事務所の住所を入れた委任状を送ったら、住所を併記してくれと言われました。
というのも、公証人とは面識がありますので、これまでのやり方では本人確認作業は省略されていました。しかし、テレビ電話での認証では、面識の有無にかかわらず、公的証明書で本人確認をしなければならないそうです。
会員証ではなく運転免許証などの公的証明書で本人確認を行いますので、住所が必要というわけです。
ファックスには、テレビ電話での認証をお願いする旨と、こちらの都合の付く日を3日ほど書き添えておきます。
なお、写しを送るときはファックスでもいいのですが、メールで送ることも可能です。
また、こちらのメルアドを公証人役場に知らせる必要があります。
ファックスにメルアドを記載してもいいですが、後日こちらのメルアドに対してテレビ電話による認証に必要なURLを送ってくれますので、もしファックスで送ったときは別便でメルアドをメールしておいたほうがいいと思います。
そうすることで、公証人役場からURLを送付する際に、こちらのメルアドをわざわざ入力する必要がなくなります。
公証人から定款案などにOKの返事をもらったら、 委任状にこの定款を合綴して 、発起人から実印を押印してもらいます。
このへんもこれまでのやり方と一緒です。
そうそう、OKの返事をもらったら認証の日時も同時に打ち合わせます。
その後発起人から委任状に印鑑をもらい、申告書や印鑑証明書などと一緒に、原本を公証人役場へ郵送します。
この点が、今までのやり方と大きく違うところです。
郵送はレターパック(赤)が便利です。そのとき返信用としてこちらの宛名を書いたレターパック(赤)も同封します。
公証人役場に書類が届いたあと、担当の書記からオンライン申請をするように電話がありました。
今考えると、書類を送ったら直ぐにオンライン申請を済ませておいてもよかったようです。
オンライン申請をした翌日、手数料の振込先を知らせるメールが届きました。
認証の当日までに振り込むよう指示されていましたので、翌日の朝直ぐに振り込みました。
この点も、今までのやり方と大きく違うところです。
書類の郵送と手数料の振り込み。
まぁ、面倒くさいといえば面倒くさい作業です。
これで、テレビ電話による定款認証に必要な準備がすべて整いました。
あとは、認証の日を待つだけです。
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認証予定日の前日、担当の公証人からメールが届きました。
その中に「テレビ電話接続のためのURL」が表示されていました。
そしてメールには、「定款認証を約束した日時になったらこのURLにアクセスしてください」と記載されています。
ワタシは FaceHub がどういうものか知りたくてウズウズしていましたので、認証の日まで待てずに、メールに表示されたURLを直ぐクリックをしました。
そうしたら、Google Chrome が立ち上がり、FaceHub の画面が表示されました。
FaceHub の右側の小さな画面にはワタシの顔が表示され、左側の大きな画面には「通話待機中」という文字が表示されています。
「明日9時30分になれば、(担当の)先生の顔がここに表示されるとばい」
ワクワクしながら、 明日が来るのを待ちました。
次の日の朝、認証の約束の時間の10分ほど前にノートパソコンを立ち上げ、昨日と同じメールのURLをクリックしました。
左手には運転免許証を握っています。
ノートパソコンの画面には、昨日と同じく「通話待機中」という文字が表示されています。
約束の9時30分になりました。
しかし、何も起こりません。
数分経っても、何の変化もありません。
「昨日勝手にURLをクリックして、立ち上げたとがいかんだったろか」
焦り始めたワタシに、公証人役場から電話がかってきました。
繋がらないのですがどうしましたかと、やさしく言われます。
聞き覚えのある公証人の声です。
何度かURLをクリックしているのですが・・・、とワタシ。
双方で何度か同じようなやりとりをしているのを見て、らちが明かないと思ったのか、書記の方が電話に出ました。
彼女はパソコンに詳しいようです。
彼女の指示に従って、双方の FaceHub を閉じて再度メールのURLをクリックして繋ぎ直してみたり、改めてメールでURLを送り直してもらいそれをクリックしたりしましたが、やっぱり繋がりません。
しばらくやり取りをしていたら、公証人から11時30分に改めて行いましょうと言われ、それまでの実りのないやり取りは一時中断しました。
パソコンに詳しいと自負していたワタシは、少し落ち込んでしまいました。
「練習をしませんか」
暫くしてから件の書記の方から電話がありました。
願ってもないことでしたので、直ぐにOKをし、電話は繋ぎっぱなしで、新しくメールでURLを送ってもらったり、お互いのノートパソコンを再起動したりします。
しかし、結果は同じでした。
ワタシは、スマホに FaceHub のアプリをインストールして準備をしていましたので、スマホでもやってみようということになり、ダメモトで繋いでみました。
スマホにはなかなか慣れないワタシですが、こうなるともう必死です。
やるほかない。
スマホでは、メールのURLをタップするとチケット番号というものが表示されます。
そこで、その横にある[コピー]というボタンをタップしてコピーします。
そして、FaceHub のアプリを立ち上げ、立ち上がった FaceHub の画面で、[call]ボタンをタップします。
これで繋がるはずですが・・・
FaceHub の画面が開いたら、「通話待機中」という文字が表示されています。
スマホでもダメでした。
「繋がりませんね・・・」
と、ワタシ。
「ダメですか、それなら」
書記の方から、FaceHub には「ビデオチャット環境チェック」という機能があるのでこれを使って、それぞれの環境をチェックしてみましょうと提案がありました。
これでチェックすると、今使っているノートパソコンがテレビ電話での認証に使うことができる環境なのかわかるそうです。
やってみようということになり、すぐにチェックをしました。
結果はどちらのノートパソコンもすべて「OK」でした。
ノートパソコンには問題はありませんでした。
「こんなことはいままで無かったんですが・・・」
書記の方はもう少し調べてみると言って、電話は切れました。
「このまま、できないかもしれない・・・」
頭の片隅に不安がよぎりました。
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午後の3時を過ぎてしまいました。
「もし今日でけんなら、明日朝から公証人役場に行ってくるけん」
設立登記の提出日が迫っていましたので、テレビ電話での認証を諦めることも考えてしまいました。
「原因は何だろか・・・」
それでも、繋がらない原因をあれこれ考えました。
「もしかしたら、事務所のWiFiが悪いのかもしれん」
そう思ったワタシは、ノートパソコンにLanケーブルを繋いでWiFiを遮断し、有線でやってみることにしました。
公証人役場に電話をしてそのことを伝え、書記の方と改めて繋いでみました。
しかし、結果は同じでした。
諦めかけたワタシに、書記の方が一言、
「もしかしたら、URLが文字化けしているのかもしれません」
WORDにURLを表示してメールで送るので、ブラウザーにそのURLをコピーして開いて欲しいとのこと。
「URLが文字化け?」
そんなことがあるのだろうかと思いつつも、
「こうなったら何でもやってみましょう」
直ぐにメールが届きましたので、焦る心を抑えながら、添付されているWORDファイルをダウンロードして開きます。
開いたWORDに表示されているURLをコピーします。
Google Chrome を立ち上げてURLの窓に貼り付けます。
[→]をクリックします。
「アッ、繋がった!」
うれしそうな書記の方の声とともに、今まで「通話待機中」という文字が表示されていた FaceHub の画面に、マスクをしてこちらを見ている書記の方の姿が映りました。
ワタシはうれしくなって、ノートパソコンの向こうにいる彼女に向かって手を振ってしまいました。
その後公証人と面談ができたのは言うまでもありません。
面談では、書類が完備していること、認証後の定款は申請用総合ソフトからダウンロードできることなど普段の定款認証の時は省略される説明をされた後、運転免許証の提示を求められました。
ワタシは、ノートパソコンのカメラに運転免許証をグッと近づけ、画面いっぱいに写るようにしました。
「そうでなくて、顔の横に免許証を持って行ってください」
「動かないで」
「はい、いいです」
顔と免許証を並べて、写真を撮られました。
面談は数分で、あっけなく終わりました。
それにしても、長い一日でした。
おかげさまで、その後予定通り、設立登記を提出することができました。
今回テレビ電話での認証を体験してみて、改めて思いました。
県内で会社を設立するときは、ワタシは利用することはない。
県外で会社を設立するときには、ずいぶんありがたい方法かもしれない。
もっとも、ひねくれ者のワタシのように、県外で設立するときは観光を兼ねて県外の公証人役場に行きたいと思う同輩もいらっしゃるのではないかと・・・。
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さて、FaceHub の名誉のために、後日談をお話しします。
休日に改めてメールのURLをじっくり見てみましたが、文字化けはしていません。
そこで、文字列を比較できるフリーソフトを使って、メールに表示されたURLとWORDに表示されたURLを比較してみました。
文字列の中身は全く同じでした。
では、何故メールのURLをクリックしたのに繋がらなかったのでしょうか。
改めて、メールに表示されたURLを、クリックするのではなく右クリックして、出てきたメニューの[URLをコピー]をクリックし、送られてきたWORDに貼り付けてみました。
こうすることで、メールに表示されたURLをクリックしたときに開くURLの中身を見ることができるからです。
上の青い文字がWORDにもともと表示されてたURLで、下の黒い文字が今貼り付けたURLです。
見てわかるとおり、下のURLには上のURLにある後半の文字列がコピーされていません。
先日のテレビ電話による認証の際には、ワタシは上の青い文字をコピーしてブラウザーに貼り付け、その結果無事に繋がることができました。
そうです。
メールに表示されたURLを一生懸命名クリックして繋がらなかったのは、自分では公証人役場の FaceHub を開いていたつもりが、実は上記のような後半部分が抜けた不完全なURLで FaceHub を開いていたのです。
これでは公証人役場に繋がるわけがありません。
FaceHub には何の問題もありませんでした。
むしろ、Zoom と比べたら、ずっと使いやすいソフトだと思います。
一度は体験してみる価値のあるソフトです。
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今回のドタバタ劇のおかげで、久しぶりに会話を楽しむことができました。
コロナ過で、仲間とも会うこともできず、ましてや宴会で好き放題にしゃべることができない今日この頃。
会話を楽しむことができたというのは、何にも代えがたくありがたいことでした。
若い頃から人間嫌いだったワタシは、歳を取るにつれて人間が好きになってきたのかもしれません。