いま、ドイツの不動産登記法をかじっています。
それも、主に表題部について。
これまで「ドイツの登記簿には公信力がある」ということだけは、どこかで聞いたことがありましたが、そのほかは皆目無知の世界です。いやはや、大変です。
かじっていてみて驚いたことが幾つかあります。
所有者の生年月日や職業が登記事項であること。
数筆の土地を1個の土地として1つの登記簿を構成することができること。
土地を合併するときに、合筆の他に併合という方法があること。
また、合筆の概念自体がどうも日本と違うこと。
面積をヘクタール+アール+平方メートルで表示すること。
それから、不動産登記法とは直接関係はないですが、建物を建てるとき誤って他人の土地まで敷地に取り込んで建てたとき、取り込まれた方の所有者がすぐに文句を言わないと、建物はそのまま建てられても文句が言えなくなること。もっとも、このときは土地の使用料を請求する権利が発生しますが・・・。
しかし、一番驚いたのは、ドイツの登記簿には建物の登記簿がないということです。
えっ、と思うでしょう?
無いんです。
ドイツにだって、建物はあります。しかし、登記簿がないのです。
ところで、この前の大震災のとき、テレビで見たあの津波の光景は今でも忘れることはできません。海水がわき出るように襲っていき、家も車も流されたあの光景は、見ていて恐ろしくなってしまいました。
しかし、あとになって少し落ち着いて、何度も繰り返される映像を見て、フッと疑問が湧きました。
「家が流されるって、どういうことなんだろう。」
建物は、「日本では」独立した不動産です。だから、単独で登記簿がありますし、土地と切り離して売買もでき、あるいは担保に供されたりもします。
でも、あの光景を見ると、建物は「不動」の財産とはとてもいえません。だって、「流れる(動く)不動のもの」という言葉は矛盾しますから。
本当に、建物は不動産と呼べるのだろうか・・・。
私はドイツに行ったことはありませんので、ドイツの建物がどういう構造かはよく知りません。しかし、テレビでときおり見るヨーロッパの風景からは、石やレンガでできた強固な構造物というイメージがあります。
これだとたとえ津波が来ても流されることはないでしょうから、まさしく「不動」の財産でしょう。ドイツの建物は、確かに「不動産」です。
不動でない日本の建物に建物登記簿があり、不動のドイツの建物に建物登記簿がない。
不思議です。