准完全オンライン申請のすすめ (2008.6.7)


1.起

今日は、表示の登記のお話しです。

土地家屋調査士の皆さん、准完全オンライン申請をしてみませんか。


権利の登記では、登録免許税が安くなるので、かなり多くの司法書士の方が半ライン申請を積極的にやっています。

しかし、表示の登記では例え半ライン申請をやったからといって、何のメリットもありません。いやむしろ、環境設定をする面倒くささを考えると、デメリットの方が多いでしょう。

結果、やるのは一部の土地家屋調査士に限られます。


今回日調連から「らくらく」が配布され、環境設定についてはかなり敷居が低くなりました。それで、

   「半ライン申請ば、してみろかね。」

と思う土地家屋調査士の方もだいぶ出てきたようです。

ただ、今からやってみようと思っている方の気持ちに水を差すようで申し訳ありませんが、申請書だけを送信する半ライン申請は、多分2〜3度体験すれば、

   「半ライン申請は、もうよか。」

で終わってしまうでしょう。何のメリットもありませんから。(^_^;)


そこで、「准完全オンライン申請のすすめ」です。


2.承 その1

「准完全オンライン申請」という言葉は、聞いたことがないでしょう?

当然です。ワタシが勝手に使っている呼び方ですから。

最近では、「助教授」とは言わずに「准教授」といいますし、「看護師」に準じる資格として「准看護師」というものもあります。

「准完全オンライン申請」は、完全なオンライン申請ではないけれど、それにすごく近いオンライン申請のやり方という意味です。


「完全なオンライン申請」との違いは、委任状の取り扱いだけです。


「完全なオンライン申請」では、申請人が個人の場合、委任状には申請人の住基カードで電子署名をしなければなりません。

しかし、「准完全オンライン申請」では、この部分だけを「特例方式」で処理します。


ご存じの方も多いと思いますが、特例方式が始まる前から、表示の登記では紙の添付書類をPDFファイルにして送信し、後日原本を提示する取り扱いが認められていました。(不動産登記令第13条)

ただし、これには例外があって、申請人と申請代理人が作った書類には適用がありません。また、建物図面や地積測量図などの図面類にも適用がありません。

ですから、紙の委任状が認められなかったのです。

しかし、今年の1月15日から特例方式が始まり、委任状についての足かせが取れました。

「不動産登記令第13条に、委任状を加えてほしい。」という一部の土地家屋調査士の願いが、期せずして、特例方式で実現しました。

その他の添付書類は、調査士ICカードで電子署名をすれば処理できます。


これで、「准完全オンライン申請」をやらない手はありません。


3.承 その2

で、実際に、建物表題登記を「准完全オンライン申請」で申請してみました。

次のようにして、添付書類を申請書に添付しました。

  1. 各階平面図と建物図面は、CADからそのままTIFFファイルで出力し、日調連のXML署名ツールを使って、調査士ICカードで XML署名 をします。


  2. 調査報告書は、日調連の不動産調査報告書入力システムで作成したものをPDFファイルで出力し、調査士ICカードで PDF署名 をします。


  3. 住民票や工事人の証明書、確認通知書など第三者が作った紙の書類は、 スキャナでPDFファイル にし、これに調査士ICカードでPDF署名をします。


  4. 委任状は、特例方式適用ですので、送信する必要はありません。(ワタシは、スキャナでPDFファイルにして添付しました。はい、蛇足です。)

10数ページある確認通知書をスキャナでPDFファイルにするのは、面倒な作業でした。その他は、それほど面倒な作業ではありません。

原本還付用の写しを提出する必要がないので、紙とプリンターのインクを節約できます。

また、ファイルの容量が許せば写真は何枚も添付できますし、大きい写真も心おきなく添付*1できます。(貧乏性ですから・・・・。)


4.転

送信した後の法務局の対応は、一言で言うと大変でした。

まず、送信するファイルの容量がどうしても大きくなりますので、オンライン申請システムが正常に対応してくれない場合があります。

法務局から、電話です。

   「添付されたファイルが開かないのですが・・・。」

仕方がないので、添付書類だけ補正書に乗せて送信し直します。

再び、法務局から電話です。

   「ファイルは開きましたが、電子署名の認証ができないのがあります。」

   「電子署名はしたんですよね?」

など、いろいろです。

しかし、これらのことは添付するファイルをできるだけ小さくしたり、どうしてもやむを得ないときは原本の写しを紙で提出し直すことで解決できます。


意外なのは、不動産登記令第13条の規定を知らない職員が結構多いことです。

   「(特例方式では)添付書類は送信しなくていいですよ。」

   「原本還付するなら添付書類のコピーを出してね。」


   「・・・・、あのねぇ。」

文句の一つも言いたくなります。

ただし、法務局の名誉のために付け加えますが、何の補正も出さずに黙って処理してくれた勉強熱心な職員の方もいます。

まぁ、これらのやりとりも、楽しいことではありますが・・・・。


5.結

で、最初の呼びかけ

「土地家屋調査士の皆さん、准完全オンライン申請をしてみませんか。」

の理由です。


この申請をやってみると、何か技術者としての土地家屋調査士の心がくすぐられます。

妙に充実感があります。


それに、 ここをクリック してみてください。

これは、法務局から取り寄せた登記完了後の建物図面を、スキャナで読み取ったものです。

とてもきれいでしょう?

こんなきれいな建物図面が交付されます。*2


あなたも、半ライン申請に慣れたなら、次は「准完全オンライン申請」をしてみませんか。




*1 (削除)


*2 山形の荒井さんから情報を頂きました。

ワタシが申請したのは熊本本局ですが、ここで証明書を請求すると、建物図面がTIFFファイルから直接写しとして出力されて交付されますので、とてもきれいな図面になります。

山形本局では、建物表題登記の申請をすると、紙の建物図面を出すように協力要請があり、登記完了後に証明書を請求すると、この紙の建物図面がコピーされて交付されるそうです。

このようにまだまだ各局で取り扱いがまちまちですので、ここでの話は「あなたの登記所でも、もうじきそうなりますよ。」ということで、気長に読んでください。荒井さん、貴重な情報、感謝です。

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