日調連が作っているオンライン申請環境設定ソフト「らくらく」のβ版を入手しました。早速試してみましたが、なかなか良くできたソフトです。今回は、このソフトの紹介と、検証の経過及び結果の報告です。
この種のソフトは、すでに(株)リーガルや(株)BBCから有料で提供されています。しかし、「らくらく」がこれらのソフトと異なって優れたところは、土地家屋調査士がオンライン甲号申請をするために必要な環境設定を、簡単にできるところです。
具体的には、ICカードリーダライタを前もって使えるように設定しておけば、「らくらく」を使って環境設定をすると調査士ICカードが利用できるようになり、アクロバットをインストールしていればPDF署名ができるようになります。
ワタシは、日調連が大切な会費を使って、独自に環境設定用のソフトを作ることに、ずーっと疑問を抱いていました。しかし、このソフトが甲号申請の環境設定まですると知って、少しだけ疑問が解消しました。少なくとも、土地家屋調査士専業者にとっては、朗報でしょう。
司法書士兼業者にとってどうかというと、このソフトの作り方を見ると、兼業者のことはあまり考慮されていないというのが正直な気持ちです。理由は、ICカード切替ツールのインストール関するもので、後で触れることにします。
検証は、次の4つのパターンで行いました。
1.ユーザアカウントが全角文字の場合
2.何も設定していない場合
3.すでにJRE1.4.2_16が入っている場合
4.司法書士業務で使用(調査士業務なし)している場合
1.ユーザアカウントが全角文字の場合
オンライン申請システムを利用するためには、ユーザアカウントが半角文字でなければなりません。「らくらく」はどう対応しているのでしょうか。
「らくらく」を起動します。すると、始めにパソコンがオンライン申請に適合したものかどうかのチェックがされます。
ユーザアカウントが全角文字の場合は、「ユーザ名」に(×)がついて、半角文字で新しいユーザアカウントを作成するように促すメッセージと、作成方法の解説が表示されます。
合格です。
2.何も設定していない場合
オンライン申請システムの環境設定が一度もされていないパソコンや、環境設定が終わっているものを全部アンインストールしたパソコンで、「らくらく」を使ってみました。問題点が3つ出てきました。
「らくらく」を立ち上げて、画面の指示に従ってボタンをクリックしていきます。初めての人でもわかりやすいメッセージです。
法務省の自己署名証明書がインストールされ、Java(JRE)のダウンロード、インストールと続きます。
その後にJREに証明書を登録する画面が出ますが、何故か「証明書は登録済みです。」と記載され、コマンドプロンプト画面による登録が省略されます。
不審に思いながらも、画面を先へ進めます。
オンライン申請システムインストーラがインストールされ、オンライン申請支援ソフトがインストールされます。指示通りにボタンをクリックするだけです。
オンライン乙号申請の環境設定が終わると、続いてオンライン甲号申請の環境設定です。
ユーザ名とIDを入力して日調連の「会員の広場」に入り、調査士ICカードドライバがインストールされます。それが終わると、調査士電子証明書PDF署名プラグインソフトがインストールされます。
ここまではスムーズに流れていきます。
さらにクリックを続け、XML署名ツールのインストールが始まります。ここでクリックする場所を間違えて、背景の池の写真をクリックしたところ、ウイザード画面が消えてしまい、先へ進めなくなってしまいました。
仕方がないのでタスクマネージャを起動し、強制終了して最初からやり直しです。
後で調べてみて分かったことですが、ウイザード画面が池の写真の後ろに隠れてしまい、写真に邪魔されてしまったようです。となると、ディスクトップ全体を覆っている池の写真は、邪魔者ということになります。ここは改良すべき点でしょう。(問題点1)
最後にICカード切替ツールがインストールされて、全てのソフトがインストールされました。
終了の画面になりますので、[終了]ボタンをクリックします。すると、何も反応がありません。何度か試してみたのですが、[終了]をクリックしても終わらないことが時々あります。
仕方がありませんので、このときも強制終了してしまいました。
このソフトの名誉のために付け加えますが、[終了]ボタンをクリックして、ソフトが終了することもあるのです。何か狐につままれたような感じです。修正が必要です。(問題点2)
このあと、BBCの「全自動オンラインシステム」というソフトを使って診断をしてみたところ、やはりJREのキーストアへ証明書の登録がされていませんでした。ぶつぶつ言いながら、手動で登録をします。
この証明書の登録は、オンライン乙号申請の環境設定で一番面倒な作業ですので、ここでのトラブルは困ったものです。パソコンの状況によっては、証明書の登録がされることもありますので、すでに機能は備えているようです。
JREのキーストアへ常に証明書が登録されるように、修正が必要です。(問題点3)
3.すでにJRE1.4.2_16が入っている場合
オンライン申請システムを利用している方はご存じかもしれませんが、Java(JRE)は時々バージョンアップをします。
そこで、このバージョンアップに対応できるかどうかを調べるために、JRE1.4.2_16がインストールされ、実際にオンライン申請システムを利用することができる環境設定がなされたパソコンで試してみました。新たに、問題点も1つ出てきました。
「らくらく」を起動し、自己証明書の登録をスキップします。「Javaの設定」で[次へ]をクリックし進んでいくと、「オンライン申請システムインストーラ」の削除が始まります。削除が終わると、JRE1.4.2_16の削除が始まり、しばらくすると終わります。
ここまでは順調です。
「おっ、「らくらく」はJREのバージョンアップにも対応している・・・」と、一瞬感動しました。
しかし、感動したのもつかの間、JRE1.4.2_17のインストールの開始画面が出て、画面が固まってしまいました。全く動きません。仕方がないので、ソフトを強制終了して再度立ち上げ、最初から同じようにクリックしていきます。
前回の操作で削除作業は終わっていますので、「オンライン申請システムインストーラ」の削除やJRE1.4.2_16の削除はありません。
今度はスムーズに、JRE1.4.2_17のインストールの開始画面から先に進んでいきます。JRE1.4.2_17のインストールが終わると、JREに証明書を登録する画面が出ます。
しかし、ここでも「証明書は登録済みです。」と記載され、コマンドプロンプト画面による登録は省略されます。
次に、「オンライン申請システムインストーラ」のインストールが始まり、これも無事インストールが終わります。「申請書作成支援ソフト」から先はすでにインストールが済んでいますので、「このソフトはインストール済みです。」のメッセージ画面が次々に出て、全ての作業は終わります。
このあと、BBCの「全自動オンラインシステム」を使って診断をしてみたところ、やはりJREのキーストアへ証明書の登録がされていませんでした。
この検証で明らかになったのは、次のことです。
折角バージョンアップの機能も備えているのですから、問題点を是非修正してもらいたいものです。
4.司法書士業務で使用(調査士業務なし)している場合
司法書士兼業者の中には、すでにオンライン申請をしている人も多いと思います。「らくらく」を使うには、何か支障はないのでしょうか。
司法書士業務でオンライン申請をしている場合、パソコンではすでに司法書士ICカードを使うことができる状態になっています。詳しい検証経過は省略しますが、ICカード切替ツールに司法書士ICカードを登録していない場合、このパソコンでそのまま「らくらく」を使うと、オンライン申請システムで司法書士ICカードが使えなくなります。
そうならないようにするためには、事前に必ずICカード切替ツールをインストールし、司法書士ICカードを登録してから「らくらく」を使う様にしなければなりません。
「らくらく」の最初の画面に、この注意事項を是非入れてもらいたいものです。(要望1)
5.その他
ワタシの検証ではないのですが、今までインターネット登記情報サービスを利用して、地図の閲覧ができていたパソコンで「らくらく」を使ったところ、地図の閲覧ができなくなってしまったという報告があります。
エラーメッセージの内容から、「Image I/O Tools」に不具合が発生するようで、その後四苦八苦していろいろ試した結果、Javaメモリ割り当て量を192mから半分の96mにしたら、再び地図の閲覧ができるようになったとのことです。
原因はどうであれ、今までできていたものができなくなるというのは、何もできないソフトよりも困ります。この不具合は必ず修正しなければならない点です。これをそのままにして公開すれば、日調連はきっと後悔するでしょう。座布団1枚!(問題点5)
以上、現時点ではいくつかの問題点を抱えているソフトですが、無料でこれだけのソフトを使うことができるということは、大変ありがたいことです。是非必要な部分に修正と改良を加え、パソコンにあまり詳しくない会員でも気軽に使えるようなソフトにして、リリースして頂きたいと思います。
最後に、日調連の執行部に感謝し、このソフトをプログラミングされた方に敬意を表します。