ドイツには建物の登記簿がない その4 (2014.5.21)


日本には、土地と建物の登記簿があります。

土地は、個人にとっても国家にとっても大切な財産ですから、不動産登記法第14条で地図が備え付けられることになっています。そして、少しずつですが、地図が整備されつつあります。

14条の地図は、大部分が地籍調査の地籍図の成果をそのまま持ってきていますが、少なくとも全国の60%位は備え付けられているようです。

もっとも、都会−特に大都会と呼ばれる所は、未だに多くのところが備え付けがないようですが、地理空間情報活用推進基本法が制定され、地方公共団体でも独自の地図データが整備されてきているようですので、たぶん都市部の14条の地図(地籍図)も段々備え付けられていくことでしょう。


日本では、建物は土地から独立した大切な不動産です。

ですから、同じく不動産登記法第14条で建物所在図が備え付けられることになっています。しかし、ホンの一部を除いて、建物所在図は備え付けられていませんし*1、今後積極的に建物所在図を作っていくというような話しを聞いたこともありません。*2

今度の大震災では、多くの建物が津波で流されたり、壊されたりしており、また地震で倒壊した建物も数多くあるようです。前にも書いたことですが、建物滅失調査の際に建物の特定が難しくて困ったという話しを聞きましたが、少なくとも建物所在図が備え付けられていれば、表題登記がされた建物だけは特定が容易だったと思われます。*3

また、不動産売買の決済時に感じることですが、土地とその上の建物の売買の際、ホントに売買対象の登記簿の建物がこの土地の上に建っている建物なのか、ときどき不安になることがあります。建物図面があればまだいいのですが、無い場合は字図と住宅地図で確認するほかはなく、こんな時も建物所在図があれば間違いがなくなり、その結果取引の安全と円滑化に貢献することができるはずなのですが。


ところで、ドイツにおいても土地は個人にとっても国家にとっても大切な財産ですから、当然地図(地籍図)が備え付けらているそうです。それも100%。*4

ドイツにおいては、地図は州の測量局という登記所とは別の独立した機関が作り、管理をしているようです。法律の建前として、法務局が作成し管理をすることとなっている日本とは大きく環境が異なるようです。日本でいえば、さしずめ地方自治体の地籍調査課が14条の地図を作り管理をするといったところでしょうか。*5

そして、例えば土地を分筆するときは、公認測量士という資格を持った人が土地の地籍を調査測量し、測量局(の地方部局である測量事務所)に分筆の申請をして分筆処理をしてもらい、その成果が登記所(実際は区裁判所の登記課が担当しているそうですが)に送られることになっているそうです。*6

公認測量士という資格が日本の土地家屋調査士のようでもあり、また表示登記の役所と権利登記の役所が別々であるところは一元化前の日本の制度に近いものがあります。


さて、前置きが大変長くなってしまいました。いよいよ本題です。

ドイツには建物の登記簿がありません。

ですから、当然ドイツでは日本の建物所在図に相当するものはあるはずがない・・・と私は思っていました、次のサイトを発見するまでは。

こんにちは かろう洋です!こんばんは家老洋です!

このサイトにアップされたドイツの地図を見てみると、地図には筆界や地番だけではなく、建物の形状や家屋番号などが表示されています。

なんと、日本においては幻ともいえる建物所在図に相当するものが、ドイツでは普通に存在し、閲覧できるようなのです。というより、地図が建物所在図を兼用しているといった方がいいのでしょう。*7

確かに、地図と建物所在図は一緒に作った方が、合理的です。建物は土地の従物であると考えると、当然の結果かもしれません。


ドイツには建物の登記簿がない・・・が、建物所在図(に相当するもの)がある。

日本には建物の登記簿がある・・・が、建物所在図がほとんどない。

結局、明治政府が建物の登記簿を作ったことが、建物所在図を地図から独立して作るという発想となり、未だにそれが実現していないということでしょう。

建物所在図は、何時になったら出来るのでしょう。

私の悩みは、ますます増えるばかりです。


*1 chosasi_Bkyu 「滅多に目にしない建物所在図」

*2 登記簿一元化などが規定された昭和35年の不動産登記法改正で、第17条(現第14条)に地図と建物所在図を備え付けることが盛り込まれました。そのときの国会の法務委員会で、議員からの質問に対して、政府委員である当時の民事局長から、登記簿の一元化が終了した法務局から徐々に地図や建物所在図を備え付けていくという説明がなされたようです。地図については地籍図の援用でどうにか揃いつつありますが、建物所在図についてはご存じのとおりです。

*3 建物を新築したときは、必ず登記をしなければならない義務があるにもかかわらず、未登記の建物が存在すること自体が大きな問題です。また、地方自治体が、地方税法を盾に、違法状態である未登記建物の情報を非公開にするのも問題があります。

*4 ドイツだけでなく、フランス、オランダ、韓国でも地籍調査が完了し、地籍が100%確定しているそうです。

東京財団「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点」

*5 ドイツの州(ラント)は、日本の地方自治体というよりは一つの邦に近いそうですので、単純に比較はできないのでしょうが、ドイツで地図とは地籍図のことですので、日本において、地籍調査で作られた地籍図が14条の地図に指定されることは、何ら問題はないと思います。

*6 一般社団法人土地総合研究所の定期講演会「地籍調査について」<資料7>

*7 古い資料のようですが、次のサイトでもドイツの地籍図(地図)の例が載せてあります。

春日井道彦氏「地籍図と登記」

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