ドイツには建物の登記簿がない その2 (2014.4.24)


ドイツに建物の登記簿がないと思っていたら、フランスにもイギリスにもアメリカにもオーストラリアにも建物の登記簿がないことがわかりました。*1

欧米の登記簿に建物の登記簿がないのは、欧米では建物やその他の工作物は土地の一部であると考えられているからだそうです。ドイツやフランスの民法がローマ法の「地上物は土地に属す」という原則に従っているからだそうで、多分アメリカやオーストラリアも同じ理由なんでしょう。*2

欧米では、日本と違い、建物は独立した不動産ではないのです。

ならば、建物の所有者は必ず土地の所有者と一緒なのか?。親父の土地に息子が家を建てたら建物は親父のものになってしまうのか?。親父が死んだとき土地は息子が建物はお袋がという相続はできないのか? ・・・いろいろ疑問が湧いてきます。

建物の登記簿がないとなると、不自由なことがあるのではないでしょうか。


ところで、ドイツの登記簿には、地上権登記簿というものがあるそうです。

普通の土地の登記簿は、日本と同じく登記簿の第1区(日本の甲区にあたる部分)が所有権の欄ですが(仮にここでは「所有権登記簿」と呼ぶことにします。)、地上権登記簿は第1区が地上権に関する欄になっているようです。

この地上権登記簿が、前記の疑問を解決してくれそうです。

例えば、自分の土地の上に自分で家を建てたときは、土地の所有者と建物の所有者が同じですから、何ら問題はありません。(このとき、所有権登記簿に建物の表示がされるのかどうか、されるとしてどのような表示内容なのかは、残念ながらわかりません。)

しかし、親父の土地に息子が家を建てる場合は、そういうわけにはいきません。もし、そのまま息子が家を建てると、その家は土地の所有者である親父のものになってしまうようなのです。


ではどうするのか。

まず、親父の土地に息子が地上権を設定します。そうすると、息子名義の地上権登記簿が作成されます。

息子は登記した地上権に基づいて家を建てます。その結果、建物は息子の地上権の一部となり、息子が建物の所有者であるということになる・・・という構造ではないかと思います。(建物が地上権登記簿に表示されるのか、されるとしたらどういう内容になるかはやはりわかりません。)

改めて日本の民法の第267条を見てみますと、所有権の相隣関係の規定が、地上権者と地上権者、または地上権者と所有権者との間にも準用されていることに気が付きました。ああなるほど、地上権と所有権は似たような性質を持った物権なんだと、今更ながら納得しています。


建物は土地の所有権や地上権に付随したものであるという考え方には、少し違和感がありますが、津波で流されてゆく建物の映像を思い出すと、この考え方の方が無理がないのかもしれないとも思います。

またこの方法ですと、土地に何らかの変更があっても、すぐ建物に反映されることが可能です。日本のように土地を分筆して地番が変わったのに、建物の家屋番号が変わっていないなどということもなくなるでしょう。(ドイツの土地の登記簿には家屋番号を表示することがあるようですので、建物には家屋番号が付いているのではないかと思います。ただ、これ以上の詳しいことはわかりません。)


大震災後、多くの土地家屋調査士を動員して建物の滅失調査がなされましたが、このときもっとも難しかったのは現地に建っていたと思われる建物と登記簿との照合・特定だったと福島会の会員の方から聞いたことがあります。

建物が土地の付属物であれば、土地を特定するだけで滅失した建物を特定できまるかも知れませんので、もっと容易に処理ができたかもしれません。(この辺のことは、まだよくわからないのですが・・・。)


今までは、建物の登記簿は当然存在するという前提で土地の登記簿や建物の登記簿を見てきましたが、何故日本では建物の登記簿が存在するのか、知りたくなってしまいます。というのも、日本の不動産登記法はドイツの登記法をベースにして作られたと聞いているからです。

そして、果たして建物の登記簿が本当に必要だったのか・・・という、全国の土地家屋調査士を敵に回すような思いも、ふと頭をもたげたりしています。


*1 法務省ホームページ;我が国と諸外国の不動産登記制度における登記の真正担保のための方策について(http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI43/minji43-7-2.html

*2 柴田育子;「土地と地上建物の別個独立」構成の貫徹はいかにして生じたか


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